総入れ歯の選び方ガイド〜費用、素材、適応症例を徹底解説

「入れ歯にしようと思っているけれど、どれを選べばいいのか分からない」
そんなお声を、診察室でよく耳にします。
総入れ歯には保険診療のものから自費診療のものまで、素材や製法が異なるさまざまな種類があります。費用も選択肢によって大きく異なるため、何を基準に選べばよいか迷われる方は少なくありません。
この記事では、歯学博士・顎関節咬合学会専門医として長年にわたり入れ歯治療に携わってきた経験をもとに、総入れ歯の選び方を費用・素材・適応症例の観点から分かりやすく解説します。失敗しない入れ歯選びのポイントを、ぜひ最後までご確認ください。
こんなお悩みはありませんか?
- 歯がなくなり、入れ歯を検討しているが何を選べばよいかわからない
- 総入れ歯の素材や費用の違いを詳しく知りたい
- 保険と自費でどのくらい差があるのか気になっている
費用の目安は初診時にわかりやすくご説明しますので、まずはお気軽にお越しください。
総入れ歯とは〜適応症例と基本的な仕組み
総入れ歯は、上顎または下顎のすべての歯を失った場合に使用する取り外し可能な補綴装置です。
歯を失う原因はさまざまですが、歯周病や虫歯の進行、外傷などにより全歯を失った状態を「無歯顎」と呼びます。総入れ歯はこの無歯顎の方に適応される治療です。
入れ歯は「人工歯」と「床(しょう)」の2つで構成されています。
「人工歯」は噛む機能を担う歯の部分、「床」は歯ぐきに接して入れ歯を支えるピンク色の部分です。この2つの素材や製法の組み合わせによって、入れ歯の品質・使用感・費用が大きく変わります。
なお、失った歯を補う方法にはブリッジやインプラントもあります。しかし総入れ歯には、手術不要で安全性が高い、修理や調整がしやすい、定期的に調整すれば長期間使い続けられるという、他の治療にはない大きなメリットがあります。
症例数が多く安全性が確認されているため、安心して治療を受けていただけます。

総入れ歯の素材の種類〜レジン床・金属床・シリコーン義歯を比較
素材選びは、入れ歯の使用感を左右する最も重要なポイントです。
現在、総入れ歯に使用される主な素材には「レジン床」「金属床」「シリコーン義歯」の3種類があります。それぞれの特徴を正確に理解したうえで、ご自身のお口の状態や生活スタイルに合ったものを選ぶことが大切です。
レジン床義歯〜保険診療の標準的な入れ歯
保険診療で製作できる一般的な総入れ歯です。
床の部分がアクリルレジン(プラスチック)で作られており、3割負担で上下それぞれ1万円台程度から製作できます。壊れた際の修理がしやすく、歯ぐきとのフィットが悪くなった際の調整も比較的容易です。
一方で、強度を確保するために床を厚くする必要があり、口の中に違和感を感じやすいというデメリットがあります。また、プラスチック素材のため落とすと割れやすく、変色や臭いが付きやすい点も課題です。
金属床義歯〜薄くて快適な自費診療の選択肢
床の一部をコバルトクロム・チタン・ゴールドなどの金属に置き換えた入れ歯です。
金属は強度が高いため、レジン床の約3分の1の薄さで製作できます。口の中の違和感が大幅に軽減され、食べ物の温度や味も感じやすくなります。適切なメンテナンスを続ければ数十年にわたって使用できる耐久性も魅力です。
費用は自費診療となり、素材によって異なります。コバルトクロムは金属床の中で比較的リーズナブルですが、金属アレルギーの方には使用できません。チタンは軽くて丈夫で金属アレルギーのリスクも低い素材です。ゴールドは加工精度が高く顎に馴染みやすい反面、費用が高額になります。
シリコーン義歯〜痛みが出にくい柔らかい入れ歯
床の歯ぐきに接する面をシリコーン素材に置き換えた入れ歯です。
噛んだ際の圧や衝撃を分散してくれるため、硬いものを噛んでも痛みが出にくいのが特徴です。特に下顎の入れ歯は安定しにくく歯ぐきが痩せやすいため、シリコーン義歯にするメリットが大きいとされています。金属アレルギーの心配もありません。
ただし、経年でシリコーンが劣化し噛み合わせの高さが変化する可能性があります。また、フィットが悪くなった際の調整がやや難しい点も考慮が必要です。
総入れ歯の費用相場〜保険診療と自費診療の違い
費用の違いを正確に把握することが、後悔しない選択につながります。
保険診療の総入れ歯費用
保険適用の総入れ歯は、3割負担の場合で上下それぞれ1万円台程度が目安です。
国が定めた基準に沿って製作されるため、費用を大幅に抑えられるメリットがあります。短期間で製作できる点も、早急に歯の機能を回復したい方には魅力的です。
ただし、使用できる素材や製作方法が決まっているため、患者さまのお口の状態に関わらず同じ方法で製作しなければなりません。そのため、口腔内への違和感が生じやすい場合があります。
自費診療の総入れ歯費用
自費診療では、患者さまのお口の状態に合わせた精密な入れ歯を製作できます。
費用は素材や製法によって異なり、金属床の場合はコバルトクロムで片顎50万円前後から、チタンで片顎60万円前後から、シリコーン義歯で片顎20万円台からが一般的な相場とされています。
自費診療では製作手順や回数に制限がなく、患者さまそれぞれのお口の状況を踏まえた精密な調整が可能です。初期費用は高くなりますが、長期的な使用を考えると費用対効果が高い場合もあります。
大澤一茂歯科医院の総入れ歯〜ブレード臼歯とイボカップ方式の特徴

「歯の形だけ作っても、しっかり噛める入れ歯にはならない」
これは、長年の臨床経験から確信していることです。
天然歯がしっかり噛めるのは、歯の根っこがあるからです。歯根には噛んだときの力を受け止めて適度に分散する役割があります。入れ歯の場合は歯根がない無歯顎の状態ですから、ただ歯と同じ形を作っても、噛む力を支えることができません。
だからこそ、歯を失った状態に合わせた「工夫」が必要なのです。
ブレード臼歯〜弱い力でも効率良く噛める設計
当院でおすすめしているのが「ブレード臼歯」です。
ブレード臼歯とは、奥歯の噛み合う面に金属のブレードを取り付けた人工歯のことです。弱い力でも効率良く食べ物を噛んで細かくできるように設計されています。
噛んだときに粘膜組織へ加わる力を抑えることで、長期間にわたって快適に噛めるようになります。また、入れ歯がぐらつきにくくなるのも大きな特長です。
車で移動していて海に行き当たった場合、そのまま車で突き進むことはありません。状況に合わせた工夫が必要です。それと同じで、歯根がない状態でしっかり噛めるようにするには、天然歯とは異なるアプローチが必要なのです。
イボカップ方式〜高密度で臭いにくい入れ歯床の製作
当院では総入れ歯の床製作に「イボカップ方式」を採用しています。
イボカップ方式とは、特殊なレジンを使用し、硬化させる重合の際に加圧補充することで、より高密度・高精度で丈夫な入れ歯床を製作する方法です。
一般的なレジン床と比較して気泡が少なく高密度であることが、目で見ても確認できるほどです。臭いや汚れが付きにくく、長く使っても変質しにくいのが特長です。入れ歯特有の臭いが気になる方にも、快適にお使いいただけます。
どの入れ歯が自分に向いているか、相談だけでもOKです。一緒に最適な選択肢を考えましょう。
準備修正治療とメインテナンス〜長く使える入れ歯のために

良い入れ歯を作ることと、長く使い続けることは別の話です。
どれほど精密に製作した入れ歯でも、お口の状態に合わせた調整なしには本来の機能を発揮できません。当院では「準備修正治療」と定期的な「メインテナンス」を特に重視しています。
準備修正治療〜オーダーメイドの仮縫いと同じ考え方
「準備修正治療」とは、入れ歯を調整する過程で、入れ歯が機能する装着状態を整えるために必要な治療です。
オーダーメイドの衣服を作る際には、着る人の身体にフィットさせるために仮縫いをします。準備修正治療もまったく同じ考え方です。患者さまがストレスなく快適に噛める入れ歯を製作するために、調整の過程で欠かせない重要なステップです。
この工程を丁寧に行うことで、完成した入れ歯の装着感と噛み心地が大きく変わります。
定期メインテナンス〜1〜2ヶ月に1回が目安
お口の中は日々変化します。
顎の骨や歯ぐきも少しずつ変化するため、入れ歯を快適に使い続けるためには定期的なメインテナンスが欠かせません。当院では1〜2ヶ月に1回を目安にメインテナンスを受けることをおすすめしています。
メインテナンスでは噛み合わせのチェックだけでなく、歯ぐきや残っている歯など、お口全体の健康状態を確認します。歯ぐきの変化に合わせて調整を重ねることで、長く快適に使い続けてくださっている患者さまが多くいらっしゃいます。
総入れ歯の選び方〜失敗しないための3つのポイント

では、実際にどのように総入れ歯を選べばよいのでしょうか?
長年の診療経験から、失敗しない入れ歯選びには3つの重要なポイントがあると考えています。
ポイント1〜お口の状態に合った素材を選ぶ
入れ歯の素材選びに「これが正解」という唯一の答えはありません。
歯ぐきの状態、顎の骨の形、噛み合わせのバランス、金属アレルギーの有無など、患者さまそれぞれの状況によって最適な素材は異なります。費用だけを基準に選ぶのではなく、担当医とよく相談したうえで決めることが大切です。
ポイント2〜「噛める工夫」があるかどうかを確認する
総入れ歯は、天然歯と同じ方法では噛めません。
歯根がない状態でしっかり噛めるようにするには、ブレード臼歯のような工夫が施された入れ歯を選ぶことが重要です。見た目だけでなく、機能面での工夫があるかどうかを確認してください。
ポイント3〜長期的なメンテナンス体制を確認する
入れ歯は製作後の調整とメンテナンスが品質を左右します。
定期的なメインテナンスに対応しているか、噛み合わせの変化に合わせた調整を継続的に行ってもらえるかを事前に確認しておくことが、長く快適に使い続けるための条件です。
まとめ〜総入れ歯は「選び方」と「使い続け方」が大切
総入れ歯の選び方は、費用・素材・適応症例・製作方法・メンテナンス体制など、多くの要素を総合的に判断する必要があります。
保険診療のレジン床義歯は費用を抑えられる反面、使用感に課題が生じる場合があります。自費診療の金属床やシリコーン義歯は初期費用がかかりますが、快適性や耐久性に優れています。
当院では、ブレード臼歯とイボカップ方式を組み合わせた総入れ歯で、弱い力でも効率良く噛めて臭いにくい入れ歯の製作に取り組んでいます。準備修正治療を丁寧に行い、定期メインテナンスで長く快適に使い続けていただけるようサポートしています。
「どんな入れ歯が自分に合っているのか分からない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
患者さまのお口の状態とご希望をしっかりお聞きしたうえで、最適な入れ歯をご提案いたします。
▼ 水戸市赤塚・大澤一茂歯科医院の総入れ歯治療について、詳しくはこちらをご覧ください。
著者情報
院長 大澤一茂

歯学博士・顎関節咬合学会専門医として、国内外の数多くの学会へ参加しています。論文発表や症例発表も積極的に行い、シーラシステムの啓蒙活動も実施。また、著書も数多くあり、精力的に知識や技術の研鑽を続けています。
- 経歴
- 1983年城西歯科大学(現:明海大学)歯学部卒業
同大学歯周病学教室入局 - 1995年歯学博士(学位取得)
- 1999年日本顎咬合学会認定医
- 2003年国際口腔インプラント専門医学会(ICOI)認定医
- 2007年日本顎咬合学会指導医
- 2009年近未来オステオインプラント学会(IPOI)指導医
- 1983年城西歯科大学(現:明海大学)歯学部卒業
- 資格
日本顎咬合学会認定医
日本顎咬合学会指導医
近未来オステオインプラント学会(IPOI)指導医 - 所属学会
スタディグループSAEY
日本顎咬合学会
近未来オステオインプラント学会(IPOI)
国際口腔インプラント専門医学会(ICOI)